オトナの階段

6/10
前へ
/11ページ
次へ
やがて画面が切り替わり、 ベッドの上に腰かけたヴィエラさんを写すカメラ。 さっきまでの色っぽさはどこへやら、白いワンピースを着てにこやかに笑うその姿はまるで別人のようだった。 オトナの女性にはいろんな表情があるのだな、などと思って観ていたら、何やら、ヴィエラさんに対するインタビューが始まったようだ。 Q.初体験はいつ? 『えぇっとぉ、高校一年の時だったかなぁ?』 Q.その相手は? 『えー、いっこ上の先輩と』 Q.場所は? 『その人んちで。でもさぁ、その時じつはぁ、一階にぃ、その人の家族がいてぇ…!』 「…ねぇ、にぃちゃん」 「なんだ?」 「つまんない。インタビューなんてみてもつまんないよ!ねぇ、早送りしよーよ~…!」 「バカ言え。インタビューは重要なんだぞ?あ、こんなフツーの子が今からえっちなコトするんだ!という気持ちの高ぶりが必要なんだ。黙って観てろ」 そう言って俺は、焦る弟をたしなめつつ画面に目を戻した。 Q.一番感じるところは? 『…え~、やっぱクリかなぁ…?やだぁもぉー!チョーハズい!』 「ねぇ、にぃちゃん…。クリ、って、なんのこと?」 「あの…、それはあれだ、例のクリステルのことだ。いいから黙って観てろ」 「クリステルが感じるからチョーハズいの…??」 疑問符だらけの顔を向ける弟を無視し、俺は再び画面に集中する。 どうやら長かったインタビューも終わったようで、画面は一旦ホワイトアウトした。 これからついに、 ついに始まるのだ。 さすがに今度ばかりは、俺もまた弟と同じように生唾を飲み込んだのだった。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

32人が本棚に入れています
本棚に追加