事件一

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ふーん、と適当に相槌を打った。正直後半から訊いていなかった。   三十分程時間が経過した、教室の外が騒がしくなってきた。 教師達が珍しく騒いでいた。大槻教授が大声を上げて廊下を走っている。 「何の騒ぎだ?」 俺が首を傾げると、教室のドアが勢いよく開かれ、大きな音を立てる。教室にいた十数人が一斉にドアの方に目を向けた。 「お、おいお前ら聞いたか」 ドアを開けたのは飯島だった。飯島は一時間程前にトイレに行ったきりだった。随分長いトイレだと思っていたが、どうやら違ったらしい。 「どうした飯島、顔真っ青だぞ?」 「……た」 「は?」 飯島はか細い声で何かを言った。近くにいた嘉山が飯島に近づき、もう一度「何があった」と訊く。 「……てた」 「いや、聞こえねって」 飯島は額に脂汗を浮かべている。微かだが、声が震えているのが解った。 「……人が、死んでた」 なぜかその言葉だけは、嫌に耳に響いた。
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