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「どうしますか?凸しますか?」
「生憎だが俺はいま無一文だ」
俺がそう言うと、圭は自分の財布を開いた。が、すぐに肩を落とす。暗いオーラが背中から滲み出ている気がした。
「僕も無いです。はい」
「仕方ない、諦めて帰るぞ」
踵を返し、店から離れる、後ろから圭が、とぼとぼと付いてきた。
家に着く前の十字路で圭と別れる。家の前にはいつも野良猫がたむろしている。一匹の三毛猫が欠伸をしていた。
確か三毛猫の雄には希少価値があるらしい、なんでも三万分に一の確立でしか誕生しないのだという、とりわけ珍しい訳ではない三毛猫が、雄というだけで高貴な存在になってしまうのだ。
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