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皆さんは、ご存知だろうか。孫策と周瑜には、それぞれ大変美しい妻がいたのを。
姉の大喬は孫策に、妹の小喬は周瑜に嫁いだその姉妹。人呼んで、江東の二喬。
華も恥じらう程の美貌だったと伝えられている。
「尚香、戻ったぞ!」
バターンと足で扉を蹴り開ける伯符殿。
戦から帰ると毎回の恒例だ。
「お帰りなさい兄上、扉が外れるので遠慮を知れとわたしは何度言えば良いのですか?」
「今日に関しては両手塞がりなんだ!」
彼の言葉に反応して彼の腕の中を見ると。
「彼女は大喬。俺の妻と決めた!」
すごい美人さんがいた。
「大変だ~兄上がついに誘拐までしたぞ~」
「誘拐犯呼ばわり!?」
お持ち帰りされた美しい女性は、伯符殿が叫んだ通り、大喬と名乗った。
あれ、聞き覚えあるお名前。
しかし何はともあれ、わたしは彼の愚行に深々と頭を下げた。
「大喬殿、愚兄が大変申し訳ありませんでした」
「か、顔を上げてくださいませ尚香様!抵抗しなかった私にも責任が・・・」
美女は恐縮しても美しい。
ちなみに誘拐犯な伯符殿は、部屋の隅で拗ねている。
「それに私自身、孫策様と共にいるのも良いかと考えましたの」
「え」
直後、うっとりと夢見がちに言う彼女の言葉に、わたしはフリーズした。
共にいる?誰と?伯符殿と???・・・・・・マジで!?
けれど婚姻のどうこうまでわたしが手を出すのは、さすがに気が引ける。しかも政略結婚ならまだしも、これ惚れてるし、お互いに。
「あの方の覇王の道を、近くで見てみたいのです」
花が綻ぶように微笑む大喬殿は、幸せそうで。
わたしは、何もしないことにした。
1分後。
「はぁぁぁくふぅぅぅぅぅう!!!」
ガターンと大きな音と共に、こちらも女性を連れて公瑾殿。
わたしは最早遠い目で尋ねる。
「お帰りなさい、昨今は敵方の女性を連れ帰るのが流行りなんですか?」
「違います、そこの脳無しと同じにしないでください」
グサァッ
即答する公瑾殿。彼の言葉は的確に刺さり、伯符殿はついに撃沈するのであった。
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