51人が本棚に入れています
本棚に追加
/102ページ
皆さんこんにちは。
わたしは疾風。
きっとどこにでもいる普通の女子高生。
今、わたしは困っている。
非常に困っているのだ。
「(わたしは何故、生きているんだ?)」
この状況を説明するために、少々時を遡ろうと思う。
~某月某日 某所にて~
今日も今日とて、学校帰りのわたしは、駅のホームで電車を待っていた。
いつも通りに携帯をイジりながらいつも通りに時間を確認し、そのときいつもとは違って誰かに線路に突き落とされた。
人々の悲鳴が聞こえる。
電車のライトが見える。
ああ、わたしは死ぬのか。
そう思った直後、ブシュッと鈍い音と共に赤い飛沫が舞い。
すぐに視界は暗転した。
そして、次に目を開けたわたしが目にしたのは。
「あっ、目を覚ましたわ。かわいい!」
「ああ、お前に似て美人な娘だ!」
知らない美男美女夫婦と、こちらを覗く数人の男の子だった。
「(・・・誰?)」
半分パニックを起こした頭で考えてみた。
だが、分からない。
まず何より問題なのは、彼らの言語が理解できない点だ。
わたしはチラリと自分の手を盗み見た。
紅葉のように小さい、赤子の手。
「(どうしてわたしは縮んでいるんだ?)」
何とか抗議も試みたが、「あ~」とか「う~」なんて意味の無い単語しか話せない。
困り果てたこっちの心情も知らず、子供たちが話に加わる。
「父上、母上。妹の名前は、もうお決めになったのですか?」
長男らしい子が尋ね、父(仮)は答える。
「もちろん決まっておる。姫、お前の名は尚香だぞ!」
バーンと名前を書いた紙をわたしに見せる父(仮)。
この人、相手が赤子なのを忘れてはいないだろうか。
とりあえず、兄(仮)の言葉の中に妹を表す「妹々」が聞き取れた。
これを最初のヒントとしよう。
つまり、ここは中国。
親子は中国語を話している。
次のヒントが、わたしに与えられた名前。
「尚香」の名を持つ中国人を、わたしは1人しか記憶していない。
三国時代、呉の国に孫夫人と呼ばれた姫君がいた。
「三国志演義」では孫尚香と記載される、武芸を好む美しい女性。
わたしは何と、彼女に成り代わってしまったのである!
最初のコメントを投稿しよう!