世の中にファンタジーは転がっている

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わたしが孫尚香なら、状況は飲み込める。 父は英雄と称される江東の虎、孫堅(字・文台)。 母は第1夫人である呉栄の妹、呉国太(ちなみに国太とは呼び名であって本名では無い)。 長男は後の小覇王、孫策(字・伯符)。 次男は呉王朝初代皇帝となる、孫権(字・仲謀)。 三男が孫翊(字・叔弼)、四男が孫匡(字・季佐)。 そして末の妹が孫尚香、わたしだ。 この中で尚香(わたし)以外は全員呉栄を母として産まれており、尚香(わたし)だけが異母兄妹となる。 (漢字が難しい点に関しては、説明するだけの精神的余裕が無いため各自ご確認願いたい) 揃いも揃って美男美女の孫家一門、尚香も美しい姫君だったらしいのでわたしはきっと成長すれば婚約話が引く手数多だろう。 貧困に苦しむ民の多い世の中で、家族に大切にされ何不自由無く育つことができる挙句、最終的には逆ハー状態な可能性もある。 人はわたしを、幸せ者と呼ぶのかもしれない。 ここまで思考を整理して、わたしは思った。 ・・・・・・で、だから何???と。 わたしは平々凡々に静かな暮らしを送りたい。てかその程度がわたしにはちょうど良いのだ。 少なくとも、十数年間わたしが生きていた世界では、分不相応な幸せを望んだ者には、必ず不幸が訪れた。人間の欲望とは際限の無いもので、好き勝手に望めばいつかは抱え切れなくなり、己の身を破滅させるのである。 それを知っていて、わたしは高望みをする気にはならない。 美貌?地位? そんなの別にいらないよ、ぜひ他の誰かに譲らせてくれ。モテモテ逆ハー体験したい女性、募集中。 ああ、願わくば神様、わたしに平凡をください・・・! こんな感じで複雑に荒れたわたしの心情も置いて、時間は先へ進むのだった、めでたしめでたし。 ちょっと待て、わたしの話はまだ終わってないし何もめでたくないぞ!?
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