江東の虎の死

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どうも皆さん、こんにちは。 元気にお過ごしだろうか。 わたし、疾風は問題無くスクスクと成長し、最近立派に1歳を迎えた。 言葉の覚えが早く賢いわたしは、周囲で神童と称されているらしい。 悪い気はしないけど、少々父上がウザい。 あの人、実は相当な親バカなのである。 わたしが良い評価を受ける度、彼はこう言って胸を張る。 「無論、俺の子故だ。嫁には絶対やらん!」 本当即刻黙れ、残念なイケメンめ。あとわたしの知識は前世のを引き継いだだけで、とりあえず両親は関係無い。 ちなみにわたしの容姿なのだが、初めて鏡を見た際には若干驚いた。 金色混じりの茶髪に、同色の目。中国人とは思えない珍しい容姿なのだ。 なお、疑問はすぐに解決した。 母上と伯母上、叔父上も、わたしと似たような容姿だったからである。もっと注意して見てみれば、兄の伯符殿と仲謀殿も髪色は明るい。 母方は胡人の血が入っている、なんて説は確かに文献でも書かれていた。無論、世間に流れる一説でしかなく、史実として確立された話ではない。 しかしわたしが生まれたのが、必ずしも「わたしが生きていた世界の過去」とは限らない。具体的には、単純にタイムスリップの上で古代中国に転生したのか、はたまた異世界の古代中国に転生トリップしたのかでは、考え方がいろいろ違うということだ。 だからこの世界ではきっとそれが正しいんだろう、とわたしは納得した。 ところでわたしはまだ幼く言葉も呂律が回らないため、前世の話とかはできない。 幼子を装うのは心底面倒だけど、致し方ない。3歳頃まで待とう、とわたしは決意していた。 そんなわたしにとっての、転生後最初の一大事が3歳になった年に起きるなんて、今のわたしはまだ知らなくて。 わたしはただ静かに、母上の腕に抱かれているのだった。 余談だが、誕生直後の授乳期間諸々がかなり恥ずかしかったのはここでは伏せておこうと思う。
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