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「でも、だからこそ、小説の中に同音異義語を巧く盛り込むだけで『おー』と感心される。
それだけ同音異義語は、近いものに見えて関わり難いものなのよ」
「成る程……でも、同音異義語をどう応用するんですか?」
「基本的には、私が最初に言った洒落みたいなものよ。
一つの流れの中に全く意味の違う言葉を二つ放り込む、大して難題ではないと思うけど?」
「うーん…………つまり、こんな感じですか?」
『扉を開けて広がるのは、まさに地獄の1ページだった。
泣き叫ぶ子供。
断末魔を上げる淑女。
怒号をブチ撒ける中年男性。
血肉撒き散らし、やがて訪れる死を否定せんと声を炸裂させる。
憐れな阿鼻叫喚の旋律。
その地獄絵図に、私は戦慄した』
「『旋律』と『戦慄』ね……まぁ無理矢理感は否めないけど、大体使い方は間違ってないわ」
(ほっ)
「そんな風に同音異義語を文章に加えるだけで、確実に一段二段は見映えが良くなるわ。
『声』に出しては使えなくても、小説なら『文字』で同音異義語を存分に使えるんだから」
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