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くるくるくるくる風車
今日も今日とて泪橋を渡りに女がやってくる
髪はほつれ唇は青ざめ
生気のない蝋人形がごとく
焦点の合わない虚ろな目で
それでも渡りにやってくる
気が触れていても想い人との約束だけは忘れない
全てを諦めてきた女の唯一の願い
たったひとつ叶えたい
それだけを支えに生きてきた
裏切られた女はそうとも知らず
ひとときの幸せな夢に思いを馳せる
くるくるくるくる風車
今日も今日とて待ち人来ず
投げる匙すら残っていない
それでもついに願い叶わず
とうとう最期の匙を投げた
くるくるくるくる風車
くるくるくるくる女も回る
風車の軋む音に合わせて狂女も美しく軋んだ
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