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「私は…恋い焦がれることなんてないわよ。」
チヒロ「どうして?」
千尋は間一髪入れる間もなく問い返してきた
「どうして…って……」
ツユ「恥じることはないのですよ?貴女は朔羅と同じ運命を背負う子…」
そうでしょう?雪の子…
「………っ」
チヒロ「本当のことを教えてくれ、雪華は…君は本物の妖怪なのか?」
「……どうしてそんなこと聞くの?」
エナは薄ら笑いを浮かべながら、力を高めて冷気を作り出すと、地面がパキパキと凍り付き始めた
「私が……何に見えるの?人間に見える?人間にこんなことが出来るの!?」
エナの沸々と湧き上がる怒りに合わせて、爆発するように冷気が溢れ出し吹雪が巻き起こり辺りが真っ白に染まった
「貴方に……何が分かるの…?」
真っ白の中、2人になったその中で
チヒロ「分かるよ。」
地面から生えた氷柱に包囲されながらも千尋は優しく微笑み、ただ見つめ続ける
「……貴方何かに、分かるはずがないわよ…!!」
吹雪をさらに強めようとしたが
「!!」
自分の中から力が薄れていくのが感じられる
白かった髪が少しずつ黒に戻りつつある…
「……夜明けか……!!」
このままじゃいけないと、崩れていく氷柱とおさまっていく吹雪をよそに、エナは千尋の前から去ろうと背を向けた
しかし、それは叶わなかった
チヒロ「まだ…答えを聞いてない。」
千尋の真剣な顔とその手が、エナの手を掴んで放さないからだ
「放して!!早く!!」
取り乱す姿すら溶ける雪のように淡くなっていき
「大丈夫…僕は、君がどんな姿であろうと否定しない。ずっと秘密にしておくから…僕は、嫌いになったりしない。
嫌いになるものか…
僕がずっと捜してた人、ずっと好きだった…あの夜からずっと…
宮部さん───……」
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