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深き山の変人男
木々が生い茂る山の中、少女は走る。
時折足がもつれ転倒しそうになるが必死に堪えて足を動かし続ける。
山を登った直後に走って下るハメに陥ったことで、体力の限界なんてとうの昔に超えている。幸せとは真逆の状況に舌打ちをする。
激しい息切れで喉が渇き、体が水を欲する。
口で大きく息をするため、いつからか喉奥が血液が混じった風な感覚に陥っていた。
柔肌が見える至る所に水滴が浮かんでいる。
足には大量の乳酸がたまっており、気を抜けばすぐにでも倒れそうだ。
それなのに何故走るか、答えは明白だった。
触手がいた。
触手モンスターがいたのだ。
触手モンスターに対する理不尽な怒りと最大限の恐怖を滲ませ、自分を奮い立たすためにも余計疲れることにはなるが疲れた身体に鞭を打って、さらに大きく息を吸って叫んだ。
「ちょっとぉぉぉぉぉ! 触手モンスターいるんだけどぉぉぉ!? 気持ち悪いぃぃぃぃぃぃ!」
普段からのあたしからは想像もつかない大声でみっともなく思うが、あたしは大の触手嫌いである。故に走るのだ
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