10人が本棚に入れています
本棚に追加
手袋を外し、おれは調理に取りかかる。これを調理と呼んでいいのかはともかくとして、獣モンスターを捌く準備を整えることにした。
「燃えろ」
標的にあわせて、魔法を展開させる。まずは毛を焼いて包丁を入れやすくすることから始まる。
やがて毛は焼失し、骨に包丁が当たらないよう細心の注意を払いながら、肉を適当な大きさにカットする。
先ほど焼いた表面を切り落として、残った肉を均等に切り分ける。
「とりあえずこんなもんかな? あ、血抜き忘れてた……どうしよ」
普通に頭から抜け落ちていた。ま、まぁ焼けばどうにかなるってきっと!
処理の甘さを見なかったことにして、もう一度肉を炙り焼きする。獣モンスターは家畜の牛と同じくらいなので、赤いところがほんの少しくらい残っていてもさして問題はない。
次は鍋に水を入れて、設置してある金網の上に置く。自分で造ったものだから使用用途が若干違うかもしれないけどやっぱり大目に見てほしい。
「味付けは……今日はキノコの出汁でいいか。いいところに食べられるキノコも生えていることだし」
ご都合主義ってこんなことをいうのだろうか。
おれが飯の用意をせっせとしていると、肉が焼ける香ばしい匂いに誘われたのか、近くの木にもたれかけさせていた少女が目を覚ました。
目をこすって見渡す少女の瞳には、安堵が浮かんでいた。しかし、素知らぬ男……おれを見つけると、目をすぼめてギロリと睨みつけた。
しかしおれは嫌われたくない一心で無駄なことは絶対に言わない。改めて少女を見ると、ガラス玉をはめたように綺麗な紅い瞳をしていた。こんな子がおどおどしてたら間違いなくアウトな妄想をしていた。あぶないよ全く。
違う感じに妄想で出てきた少女を頭の中から振り払い、火を消してから少女に向き直った。
「よっ、目を覚ましたか?」
「あんた誰? それと、ここどこなの? あのキモいやつは?」
いきなり質問責めか、おれは苦笑しながら一つ一つの回答をしていく。
「おれはこの山の住人だ。んでここはおれの家の近く。お前が呼びかけに応じなかったから連れてきた。キモいやつが何かは知らないけど」
「……気持ち悪いやつは気持ち悪いやつよ。あたしを連れ去ってきた誘拐犯。あたし、帰る……っつ!」
少女は立ち上がろうとしたが、顔を歪めて座り込んだ。
最初のコメントを投稿しよう!