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織田家と徳川家の同盟は昨晩にさかのぼる。
三河での一揆を鎮圧した徳川家は、今後の方針について話合っていた。
徳川家の論議の内容は、大国武田か今川家を破った織田家と盟を結ぶかで割れていたのだ。
家臣達は議論を尽くすも答えは出ず何度も同じ話を繰り返していた。
「なんで分からねぇんだ!武田と盟を結んでも、今川の時となんら変わらねぇんだよ!また、属国になっちまうのが何故分からねぇ!」
武田との同盟を荒い口調で反対するのは本多忠勝である。家康の側近であり天下無双の豪傑だ。
「桶狭間にて敗戦した我らと信長が盟を結ぶとは考えられん。それこそ属国の扱いを受けようぞ。」
織田家との同盟を反対しているのは、酒井忠次である。徳川家の重臣中の重臣である。
三河者は頑固者が多く誰一人意見を曲げようとしないのだった。信念を曲げない強さが三河武士の強さの秘訣であったのだが、論議には向かない傾向がある様だ。
家臣達の論議をよそに家康の心はもう決まっていたのだ。いや、今川家からの独立を決意した時に決まっていたのかもしれない。
「もうよい!わしは兄者の元へ行く。徳川は織田と盟を結ぶ!異論のある者は、わしの首を武田へ持って行け。」
この言葉に、酒井忠次など武田派の武将達は素直に当主の方針に従うのであった。
三河武士は頑固者達だが当主家康の大器は、家臣一同認めている。
三河武士は今川家からの独立の際に家康の為なら、ことごとく討ち死にする覚悟であったのだ。
その家康が決めた事なのだ。反対をする必要があるだろうか。
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