桐谷塾開校

3/9
前へ
/140ページ
次へ
子供達と昼食をとっていた健志の元に一人の男がやって来た。 「まいど!いやぁ~童は、食いっぷりがいいでんなぁ~。」 この関西訛りの喋り方をする男が米を寄付してくれている林崎兵衛である。 模擬戦で藤吉郎率いる白組で奮闘していた蔵之介の父親であった。 兵衛は元々は堺の出であり関東に目を付け、10年ほど前に尾張に店を構えたのだった。 商いの激戦地堺で腕を磨いた兵衛は、たった10年で尾張の豪商としての地位を築き上げる才能であった。 息子蔵之介が世話になっているのと、自分と同じ新参者として地位を築いた桐谷家に親近感を感じていたのだ。 「これはこれは兵衛さん。子供達が笑顔で飯を食えるのも、兵衛さんのお陰ですよ!」 健志は、お世辞の様な言葉を真剣に言っていた。何故なら幾ら桐谷家でも毎日、子供達にご飯を腹一杯に食べさせる事が難しいからだ。今、桐谷塾で昼食を取らせれるのも兵衛の助力のお陰なのだ。 「いやいや。桐谷はんには、偉い儲けさせて貰ってますから、少しばかり恩返しせん事にはバチが当たります。」 この時代、効果な南蛮鎧を何百と注文してくれる桐谷家は、兵衛から見たら仏の様な客なのだ。 「それはそうとドラ息子はどうでっか?使い物になりそうでっか?」 今日兵衛が来た理由は、息子の蔵之介が桐谷家に使えたのは良いが、役に立っているのか心配して来たのだ。 親バカである。 「蔵之介なら、翔太…いや、佐々木隊に抜擢されましたよ!何でも、模擬戦での奮闘した姿に殿の目に止まった様で…ははっ。」 健志は、健の事を殿と呼ぶ事に今だ慣れていない様だ。殿と言う事に照れていた。 「あの武勇に名高い佐々木隊に息子が入ったんでっか?な…なんやてっきりドラ息子が桐谷はんに迷惑かけてるもんやと…」 兵衛は、ドラ息子と言っているが顔は喜びに満ち溢れており、蔵之介はドラ息子から自慢の息子へと昇格したのであった。 「ほな蔵之介の為にも、桐谷はんには大きなって貰わなあきまへんな…林崎屋南蛮鎧の値下げさして貰います!1割…いや、2割下げさして貰いましょう。」 兵衛は、ドラ息子だった蔵之介が一皮向けた事に喜び、鎧の値段を下げると言い出したのだ。 どんだけドラ息子だったのであろう。だが一つだけ言える事は…親バカだ。
/140ページ

最初のコメントを投稿しよう!

752人が本棚に入れています
本棚に追加