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「何故かですか。」
健は迷っていた。正直に話すか、それとも本心を偽るか…
そんな考えは、兵衛の目を見て答えは決まった。
兵衛の今の顔付きは戦人の顔と同じで、商人の顔になっていた。兵衛も思う所があるのだろう。
「雑賀の鉄砲技術と水軍が、欲しいと言うのもありますが…本心は雑賀はいつか織田家にとって厄介な敵となると思うんですよ。厄介な敵を仲間にもつ程心強い事はないじゃないですか。」
健は笑顔でそう言うとお茶を啜った。こんな真っ直ぐな目を向ける兵衛に嘘は通じない。そんな人物に嘘を言えば、今までの信用は全て失われるのを勘で悟ったからだ。
兵衛は桐谷家に、新しい国の姿を見ていた。子供達に教養を持たせ、兵農分離による兵士の強化による軍事強化と民中心の政策だ。もし、桐谷家が大名になればどんな国を作るのか。新しい国での新しい商いを夢見ていたのだ。
「何故孫市はんが、織田家と敵対するもんやと確信がもてるんでっか?」
兵衛は健が雑賀が敵対すると言い切った事に対して疑問を持った。それもそうだろう、まだ関わりの無い織田家と雑賀の敵対を今、予想出来る人間はいないだろう。
「そうですね。織田家は、これから大きくなるでしょう。大きくなれば他国との対立は激しいものとなり、雑賀も巻き込まれるのは必定。そして、雑賀こそが信長様を唯一殺せる集団だと私は思うのです。」
健の考え方は、ある意味間違いはない。雑賀は、大名支配の国では無いのに何故国として成り立っているのか?何故他の国から侵略され無いのか?その答えは、武装商人としての経済力と商いによる他国との友好関係、鉄砲の使い方を良く理解している上に、孫市の鉄砲撃ちとしての才能である。
一番大きい事は孫市が戦の最短の勝ち方を良く理解している。
指揮官を殺せばいい
指揮官が死んでしまった軍隊は、どうなるだろう?隊として機能しなくなる。機能しなくなった軍隊ほど役に立たないものはない。
簡単に行えない事だが、それを可能にするのは、雑貨の地理を知り尽くしている事と孫市の鉄砲撃ちの才能だ。凄腕のスナイパーが自分のヒィールドで獲物を待っている様なものだ。
史実でも雑賀攻めの際、織田家の武将が何人も殺されている。
信長自身も雑賀と和平を結び、殲滅を諦めた国なのだ。織田家にとって一番相性の悪い相手だと言っても過言では無いだろう。
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