徳川家康

5/17
752人が本棚に入れています
本棚に追加
/140ページ
家康は善は急げと数名の供のみを連れて尾張へ向け出立した。 (兄者…竹千代は兄者との約束を果たしに参ります。) 尾張への道中家康は心の中で呟き昔の思い出を思い出していた。 ~10年程前~ 此処は尾張のとある屋敷の庭である。庭には二人の子供がいた。 「うるさいのぉ!おみゃあは泣いてばかりじゃのう!何故泣いてばかりいるのじゃ?」 吉法師(信長)が泣いてばかりいる竹千代(家康)に対して、イライラしながら聞いた。 「うぅ…私が織田の質となったばかりに我が松平は、今川から目をつけられましょう…大国今川家に攻められたなら三河は血の海に…私が不甲斐ないばかりに…」 今川への人質として送られるはずだった竹千代は、織田家の奇襲により織田家へと連れて行かれたのであったのだ。 それにより松平家は今川と盟を結ぶ事が出来ず、大国今川と武田そして嫡男を人質に取られた織田家に囲まれ、お家存亡の危機に陥っていたのだ。 「ふん。そんな事で泣いているのか…竹千代よ。わしには関係が無い…気が散る。泣くのをやめよ。」 吉法師は興味が無いと言わんばかりに素っ気なく言った。 「関係が無くは無い。織田家がいらぬ事をしなければ、この様な事には成らなかった!」 竹千代は先程泣いていたのは嘘の様に怒り狂っていた。これが、松平一族の激情の血筋を示していた。
/140ページ

最初のコメントを投稿しよう!