徳川家康

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「何を言う。質を取るのも戦国の世の習い。松平家に隙があるのがいけぬのではないか!己の無能な家臣を呪え…」 吉法師はわざと冷たく言い放ったが、この時代の戦略に綺麗も汚いも無い、勝者は富を得、敗者は全てを失う。この時代の当たり前の話なのだ。 吉法師は正論を言ったに過ぎないのだ。だが、怒り狂っている今の竹千代には話が通じなかった様だ。 「我が松平家を侮辱するなぁー!」 ドカッ 小さい体の竹千代が吉法師を殴りつけ、その勢いのまま馬乗りになり何度も殴りつけた。 だが、吉法師は殴られ続けられるほど優しくは無い。竹千代を投げ飛ばすと思いっきり殴りつけ大声で怒鳴る。 「たわけぇい!己の家臣が不甲斐ないなら己を磨け!お前が強ければ誰からも何も奪われはせぬ!…強くなれ…竹千代。」 吉法師は大声で怒鳴るが最後の言葉は、優しくまるで自分の子供に言うように言った。 「ですが…私がいくら強くなっても大国に囲まれた今の松平を救う事は出来ませぬ…」 竹千代は幼いながらも今の松平家の立場を理解していた。 東海一の弓取りと言われている今川義元。 日の元最強と言われる騎馬隊を率いる武田信玄。 連戦連勝を飾り尾張の龍と言われる織田信秀。 それらの人物達に囲まれては、いくら松平家が強くなろうと耐える事は困難だ。 特に、武田・今川・北条の三国同盟により武田と今川が三河へ攻めてくるのは時間の問題なのである。 その為松平家は今川家の属国となり、三河を守ろうとしていたのだ。
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