徳川家康

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半刻後、清洲城内へと通された家康は広間にて信長と対面していた。 「竹千代よ…大きくなったな。」 信長は家康を昔の姿と見比べるように言った。 「兄者は立派になられました。」 家康は兄者とまた信長に言えた事に目頭が熱くなっていた。 「兄者との約束…私はこの時を心待ちにしておりました。」 家康は真っ直ぐに信長の目を見てそう言った。 信長は家康の事を良く知っている。知っているからこそ、今の家康の思いが強く伝わっていた。 家康は器用な人間では無い。その家康が共をろくにつけずに清洲城に来たのだ。 それは、ただ徳川家当主として外交にやって来たのではなく、徳川家康として幼き日の信長との約束を守りに来たのだ。 兄者と慕う者の元へ行くのに道中の護衛だけで十分である。 「ふ…いつの間にか竹千代が大人になっていたわ。良い武士の顔じゃ。して家康よ…幼き日の誓い…険しき道ぞ。覚悟は出来ておるのか?」 この時、信長の顔付きが変わった。先程までの幼き日の竹千代として見るのでは無く、徳川家康とゆう一人の戦国大名として信長は家康を見たのであった。 「覚悟は幼き日より出来ております。織田と徳川…何処よりも強き絆の同盟国に…民…いや日の元の為に天下統一成し遂げましょう。」 そう言い切った家康の顔には一切の迷いが無かった。
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