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『誰か…!誰か助けて…!』
泣きじゃくりながら叫ぶカルラだが、この時間帯に中々人を見つけられず途方に暮れた。
裏路地をガルルンの屋敷へ向かい走る。
”英雄なら助けてくれる”その願いを胸に秘めて。
裏路地を走る。
ただひたすら走り続ける。
暗闇に覆われた裏路地で、転びながらぶつかりながら…
カルラは走った。
ガルルンの屋敷へは路地を後一本。
僅かに希望が胸に宿った時だった。
―――ドサッ…
目の前に何かが落とされる。
それは低い呻き声をひたすら上げ続けていた。
その背後には、醜悪に口角を吊り上げるダークフェンリル。
金色の瞳は闇で唯一の光を灯し、カルラを見つめる。
『に…げろ…カ…ル…ラ…』
目の前の何かは人であった。
聞き覚えのあるその声…
両親だ。
四肢を裂かれた血まみれの両親の姿…
カルラは両手で頬を抑え、ガタガタと震える。
『お父…さ…ん…おかあ…さ…』
かすれた声をようやく絞りだす。
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