碧壱章 紅榛名の行方

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その頃、厨房。   「……くしゅん!」   まな板の方向から顔を反らし、 クシャミをするマサムネ。   「風邪ですか、マサムネ様?」   厨房担当の兵士が尋ねる。   「……大丈夫だ。きっと、 誰かが我が料理を 噂してるのだろう……」   (基成殿……、あの味噌煮に 気付いてくれただろうか……?)   北条の部屋。   朝食を取り終えた北条と ヨシモト。   「ごちそうさま……と」   「流石、マサムネ様の 魚料理は絶品ですわ……」   「何っ……!?」   ヨシモトの一言に驚く北条。   「いえいえ……。 こちらの話ですわ……。 オホホホ……」   高笑いするヨシモト。   (誤魔化しやがった……)   「……ところで、基成様」   膳を片付けながらも、 話題を切り返すヨシモト。   「さっきから気になっていたの ですが……。 布団部屋、開けないのですか? 今日はお天気が良いのに……。 お部屋の空気が汚れて しまいますわ」   「ああ……、まだ布団を 畳んで無いからな」   「着替える際に畳めば、 よろしかったのに……?」   「折角、持って来た膳が 冷めちゃ悪いと思ってな。 慌ててた」   「そうでしたの……。 では、折角ですから私が基成様の お布団を……」   (ま、まずいっ……!)
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