『女神の裁き』と勾玉

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何重にも掛かっていた施錠を全て外し終えたソプラは扉を開けた。 古ぼけた扉からは軋むような音が響く。 「……旅をするのは、とても危険なことなの」 と、先程まで黙っていたソプラが話し出す。天音は一瞬驚いたが、ソプラの言葉に耳を傾ける。 「天音のいた世界の事はわからないけど、ここでは最低限自分の命を守らないといけないわ」 「……はい」 「突然切りかかってきたりする人もいるし、刃物を投げてくる人もいるかもしれない」 真っ暗な部屋を歩く度に響く無機質なヒールの音。それと同じくらいソプラの声には覇気がなく、感情が籠もっていなかった。 天音はソプラを見失わないように暗い部屋を必死で歩いた。 「……だから、貴方は選択をしなくちゃいけない」 と、そこでクルリとソプラが天音を振り返る。その切れ長の瞳には決意の意志が宿っていた。
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