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『はぁ、一から十まで面倒だ。』
春も麗らか極まる今日この頃。
歩道の桜が満開に咲く坂道を、花の一輪すら一瞥もすまいとするがごとく、俯いて視線を地にはいつくばらせる若人が一人。
『・・・・そんなに俺を見ないでくれ。』
と言うか、俺の事だ。
《・・・ネェネェ、アレッテサァ・・センパイノ・・・・》
周りはきっと、小声で話しているつもりなのだろうさ。
だがね、
聞こえてるっつの!!!
どうしてこうして、
俺だけがこんなにも恨めしい面を下げにゃならんのだ!?
なんだ?俺は地面LOVEか!?
母なる地球の母性に『メロメロパンチ』だとでも!?
そんな性癖は俺にねぇぞ!
どこの地底人だ!
《・・・ナンカセンパイトハゼンゼンチガウネェ・・・・》
『・・・・・』
《・・・・ジミッテイウカ・・・・ヤメナヨ、キコエルヨ・・・》
『・・・・』
いや、やめた、いちいち気にするのはよそう。
不毛だ。
分かっていた事なんだ。
一覇と同じ学校に通う・・・
兄と同じ場所に赴く・・・・・
その意味ってヤツはさ。
深いため息とともに俺は、一瞬怒りでもたげかけた首を、また戻すのであったが、
実際はそうはならなかった。
呼び声、というか何と言うか・・・、
「お~~ぃ!カズマぁ!そんな下ばっか見てると不審者にしか見えないぞぉ~。」
『ブチッ!』
戻しかけた視線は直ぐさまヤツを捕らえる。
「相沢ぁ!誰が不審者だぁ!?」
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