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甲斐「何でそんなに人の事避けるんだよ。軽く傷つくんだけど」
甲斐が掴んでいる腕が熱を帯びジンジンとしてくる
紫音「べ、別に避けてなんかいませんけど・・・もう、時間なんで戻るだけです。」
甲斐「ふーん、まぁ、いいけど」
紫音「腕放して下さい。」
私は甲斐の掴んだ腕を振り払い急いで屋上を出て勤務に戻った
お気に入りの場所だったんだけどな
まぁ、ベンチが用意してあるって事はそれなりに人が出入りしてたんだろうけど
それから、甲斐とは何も会話することなくバイト時間が終了した
紫音「お疲れさまでした。失礼します」
店の中の人たちに声をかけて店を出た。
今日は土曜日
時間は19時を回っている
私は馳せる気持ちを抑えながら駅のコインロッカーへと急いでいた
私の後をつけている事も気づかずに
紫音「はぁ、何か今日は最悪な日だったなぁ」
独り言を呟きながらとりあえずトイレに行き服を着替えた
普段の私は、目立ちたくないから黒ぶちのめがねにジーンズにTシャツ、髪は一つに束ね所謂、まじめな格好をしている
トイレでめがねを外し、髪をほどき、手で髪の毛をくしゃくしゃと乱暴に触りスプレーで軽くセットをして化粧をした
格好も今流行の服に着替える
紫音「よし、完成」
トイレを出てコインロッカーからギターを取り出しまた駅の外へと向かう
そして、いつもの場所に腰を下ろしギターを取り出す
ポロロロン
軽くギターの音を出して音を確認
夏休みの間は毎日此処で歌う事が出来る
一人で歌うよりは誰でもいい
少しでも誰かの耳に私の歌が止まってくれればそれでいい
そんな事を考えながら自分で作った歌を歌いはじめる
この瞬間が至福の時
此処に引っ越してきてまだ一ヶ月しか経っていないから、私の歌に足を止める人は少ない
でも、それでも
一日目、二日目よりは止めて聞いてくれる人は増えたように感じる
此処が私の居場所
歌う事で自分の存在価値を得る
それが今の私
それから約二時間歌い続けた
「見つけた。こんなとこに居たんだ」
遠くで誰かが呟いていた事なんて私は気づかず・・・・
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