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気がつくと、星の海に浮かんでいた───
夢を見ているようだった。
夢であってほしいと願った。
大の字になって土の上に寝転がっているにも関わらず、身体中が疲れを訴えている。顔も体も、煤だらけ傷だらけ。自己評価ではあるが、自分が一番疲労していると言い切ることができる。
ごろんと地面に身を任せた後、随分と長い時間夜空の星を見ていたのだろう。今が唯一安らぐことのできる最後の機会(よる)であることも、すっかり忘れてしまっていたようだ。
「……眠れないの?」
少し離れた場所からかけられた声に、橘 和美は寝転がった状態で視線を投げ、体を起こした。
「うん───星を、見ていたの」
和美から少し離れた木の柱の根元に、声の主はいた。和美には見慣れた顔だ。馴染んでいると言ってもいい。
声の主───眞柴 想一は、ふっと柔らかく笑うと、あぐらの上に置いてある小銃の点検を再開しながら言う。
「静かだ……奴ら、動かないね」
「夜明けを待っているのよ。恐らくね」
「昨日から丸一日、ずっと走りっぱなしで、みんな限界だ」
想一が小銃から目を離し、眠っている他の二人のメンバーを見ながら呟く。
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