ドッグファイト事件

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「お待たせ、みんな!」 「おい、橘。救援とか言ってたけど、その肝心の救援はどうしたんだ?」  長太郎が和美にそう聞いた。  すると和美は笑顔を浮かべ、手にしていたものを皆に見せる。  それは学校の実戦訓練で使用するインカムと自衛隊が使用しているのと同タイプのタブレット端末だった。 「はい、これがその救援よ」 「マジで?」 「なによ、文句あるの? これでも無いよりはマシでしょ? いいから、素早く装着!」 「へいへい」  長太郎はそんな返事をしながら、和美に渡されたインカムを耳につける。  と、和美はみんなと離れた場所に腰を下ろしていた真帆へと近づいていく。 「遠藤さん、このタブレットはあなたにまかせるわ」 「――あたしに?」 「ええ、遠藤さんって走るのとか苦手でしょ? でも、こういうのは得意よね?」  自分にはない優れた才能を見抜く目を持っている和美は、真帆が情報処理関係の授業で見せる能力の高さに一目置いていた。 「……まあ、キライじゃないけど」  人付き合いが苦手な真帆は、和美から視線を外して少しひねくれた答えを返す。  だが和美は、それを気にした様子も見せずに言った。 「じゃあお願い。それは教官の端末で、学院内の地図が表示できるわ。それに通信装置にもなるしGPS機能もある。GPSはインカムと連動してるから、私たちの位置も把握できるはずよ」 「つまり、サポートしろってこと?」 「そうね」 「……わかった。班長の命令だし、従う」 「ありがとう。それじゃあ遠藤さんは訓練用の櫓でサポートをお願い。最終的にはこのグラウンドに追い込んで捕まえるわ」  真帆はこくりと頷いて答えると、訓練用櫓へと向かっていく。  と、準備を整えた長太郎たちが和美に声をかけた。
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