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実は想一、無類の映画好きとクラスでは知られていて、「人生は1本の映画である」という人とは一風変わった考えを持っている中学生であった。
そんな彼は日頃から、非現実に憧れているようなところがあり、何かにつけて「映画」から引用したがる。
なので今回もやはり……。
「ご名答。スクラップスというのは、チャップリンの犬の生活という映画で出てくる野良犬の名前です」
想一は人差し指をピンと立てて、得意気にそう言った。
それを聞いた長太郎は、やっぱりなという感じの表情を浮かべる。
「チャップリンの映画か……名前は知ってるけど、見たことないなぁ」
と、善司がぽつりとつぶやいた。
それをあざとく聞いていた想一は、ここぞとばかりに善司に詰め寄った。
「無声映画ですが、とても面白いですよ。笑えるところがいくつもあります。それにチャップリンのお兄さんが出てくるのも見所ですね。でも僕は特に、チャップリンのズボンの中に隠されたスクラップスがシッポで太鼓を叩くところが……」
「はいはい、映画の話はそこまで!」
和美は想一の話を強制的に断ち切った。
そしてみんなを見回すと、表情を引き締めて言う。
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