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「やっぱりお腹が空いてたのか……」
スクラップスの見事な食いっぷりを目にした善司は、思わずそうつぶやく。
と、スクラップスが善司の手にしいるもう半分のあんぱんへと視線を向ける。
「ほっ、欲しい?」
善司はそう言ってあんぱんを見せた。
するとスクラップスは、つぶらな瞳を期待に輝かせて近づいてくる。
それとは反対に、善司は少しずつ後ろへと下がっていく。
そして、スクラップスからある程度の距離を取ると、突然くるりと反転し、あんぱんを後ろ手に持って走り出した。
「――わんわん!」
スクラップスは、そんな善司の後を追いかける。
善司の”あんぱん作戦”は大成功を収めた。
「えっ、遠藤さん!」
と、インカムに向かって善司が叫ぶ。
名前を呼ばれた真帆はすぐさま善司の言いたいことを察知し、グラウンドに向かうための最短ルートを指示する。
「そこを右!」
真帆はGPSの動きを見ながら、善司に指示。
その指示を受けて、善司はただただ走る。
彼は決して運動神経が良い方ではない。
だが、こう見えて何事も諦めることを嫌う努力の人である善司は、歯を食いしばってグラウンドまで走りきる。
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