ドッグファイト事件

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「あの」  と、和美の後ろから突然声がした。  和美は肩をびくつかせて後ろを振り返る。  するとそこには、寝癖頭の鳥原亜紀(とりはら あき)が立っていた。 「なっ、なんだ。鳥原さんか」 「……すいません。少し遅れました」 「あれ? そうだったっけ?」 「はい、いまここに着いたばかりですから」 「……あははっ、そっか。じゃあ、箒はあそこに用意してあるから、ちゃっちゃとやっちゃいましょう」 「はい」  亜紀はそう答えると、校門の前に立てかけてあった箒を取りに向かう。 (いけない、すっかり鳥原さんの存在を忘れてたわ。なんかスッと現れたり、スッといなくなったりするから侮れないのよね、あの子)  和美はそんなことを思いながらも、気を取り直して箒を動かし始める。  彼女たちの行っている掃除。  これは中等部が1年から3年までの役割分担で行う地域活動のひとつだ。  毎月学年ごとの交代制で行われ、1週ごとの交代で3組のクラスが順番に校内と郊外の清掃を行う。  ちなみに、最後の4週目を1組が行ったら次は2組、その次は3組と不公平のないように順繰りに行うことになっていた。  そして最後の週が1組だった場合は、次の当番の時の1週目は2組からとなる。  5月の当番は2年生で、この前の当番の最後が3組だった。  というわけで、2週目の現在は、和美たちの所属する2年2組が担当だ。
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