ドッグファイト事件

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 この清掃活動は学院側が自主的に行っているのだが、それには理由がある。  防衛教育を行う際、どうしても備品である銃の使用や本物の戦車を用いた訓練などを行わざるをえない。  近年は国防教育法が施行されたり、自衛隊の災害救助活動などが評価されたりと、多少良くなったとはいえ、やはり日本という平和な国は、軍隊というものに対して偏った見方をする者が多い。  そして、東都防衛学院を”年端も行かない子供たちを兵士に育てる学校”として良く思わない者もまだまだいる。  そんなマイナスイメージを少しでも払拭し、地域の理解と協力を得るため――というのが、東都防衛学院が自主的に地域への貢献活動を行っている主な理由だった。 「おはようございます」  和美は、朝のランニングで学院前を通ったおじさんに頭を下げて挨拶をした。  それに倣うように、他の4人も挨拶と共に頭を下げる。  人に出会ったらきちんと挨拶をする――これも、学院のイメージアップ作戦のひとつだ。 「今日もがんばってるね。ご苦労様」 「はい、どうもありがとうございます」  和美の言葉を聞くと、にこやかな笑みを浮かべたおじさんは颯爽と駆け抜けていく。 (ふふふっ、褒められた)  和美はそんな事を思いながら、少し気分を良くして箒を動かす。  と、再び誰かの気配を感じて和美は口を開いた。 「おはようござ、いッ――!?」 「んっ? どうしたんだ、橘?」  和美のおかしな言葉を聞いた長太郎は、眉をひそめて何気なく視線を動かす。  するとそこには、人ではなく獣が佇んでいた。  その獣をみた亜紀は、手を止めてぽつりとつぶやく。
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