ドッグファイト事件

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「ちょっ、ちょっと橘さん! これってマズイんじゃないのかな!?」  善司が慌てて和美にそう声をかける。  その声にハッと我に返った和美は、ようやく冷静になって叫んだ。 「そっ、そうよ! あの野良ちゃんが校内にいたら、他の生徒たちがパニックになるわ! なんとかしないと!」 「――ふっ、俺にまかせろ!」 「なにかっこつけてんのよ、長太郎! 元はといえば、あんたが悪いようなもんじゃない!?」 「だから、俺に汚名挽回させろっていうんだよ!」 「それをいうなら、汚名返上だと思うけど」  と、真帆が冷静に長太郎の間違えを正す。  そして間髪入れずに亜紀が言った。 「……バカ」 「だぁーッ、うっせい! 女どもは黙ってろ! とにかくあいつは俺が捕まえる!」  長太郎はそう言うと、手にしていた箒を投げ出し、犬の後を追って駆け出していく。 「あっ、ちょっと待ちなさい! ――ああっ、もう! どうしてこんなことになっちゃたのよ!?」  和美は、手にした箒をブンブンと振り回しながらそう叫ぶ。  だが、動かなければ状況は変わらない。  彼女は決心して箒を置くと、橘班の全員に向かって言った。 「長太郎がなにかしでかしたら連帯責任になるわ……それなら、いっそみんなで動きましょう! 橘班はこれより、野良犬捕獲作戦を実行します!」
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