ドッグファイト事件

9/19
前へ
/19ページ
次へ
「バカモンッ! 貴様ら犬1匹になんという体たらくだァッ! 普段の訓練の成果を見せんかァッ!」  と、突然校庭に鬼のような怒鳴り声が響く。  その声に嫌というほど聞き覚えのある橘班の面々は、恐る恐る視線を後ろへと向けた。  するとそこには、この騒ぎを聞きつけて現れた鬼教官の姿があった。 「げぇ、なんでアイツがもう学校にいるんだよ」  長太郎はあからさまに嫌そうな顔をしてそうつぶやく  それに答えるように善司が言った。 「だってほら、あの教官は清掃活動の監督役だから……」 「ああ、そういやそうだったな」 「教官!」  と、和美が手を上げて立ち上がる。 「なんだァッ、橘!」 「はい、救援を願います!」 「――救援、だと?」  教官は眉をひそめる。和美はそんな教官の側に駆け寄り、何やら話をはじめた。  長太郎は、そんな和美の姿を訝しげな表情で見つめる。 「救援って……橘の奴、まさか教官に手助けしてもらつもりなのか?」 「それはないと思いますよ」  想一がそう言った。  その言葉にうなずいて、善司も言う。 「そうだね。あの鬼教官にお願いしても、きっと手伝ってくれないと思うな」 「――まさに、鬼」 「うわぁっ、鳥原さん!?」  突然自分の横から現れた亜紀の顔を見て、善司は声をうわずらせる。 「おまえいつの間にそんなところに!?」 「まっ、まったく気付きませんでした」  目を丸くしている長太郎と想一を見て、鳥原は?マークを頭に浮かべて首をかしげた。 「……はあっ、メンドイなぁ」  と、みんなの輪の外で、真帆がひとりつぶやく。  そこへ和美が戻ってきた。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加