第6章

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舞い散る桜の下で長い髪を風にたなびかせるその姿はひどく幻想的で不覚にも見とれてしまった。 「あの……」 戸惑ったような声が聞こえ意識を戻した俺は自分が彼女の腕を掴んでいることに気づき息をのんだ。 (早く離さなければ!) そんな思考とは裏腹に腕を掴む力は増していく。 「ッツ」 あまりの痛みに彼女は顔を歪ませた。 しかしすぐに表情をもとに戻し、ふわりと微笑むと 「大丈夫ですよ。私は消えたりしませんから」 そう言って俺の手をその白く柔らかな手で包みこんだ。
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