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善司も何も言わず、自らも控えめにディスプレイを覗いた。
真帆がモニタリングしているのは、この東都防衛学院に設置された監視カメラの映像だ。異常なまでに設備の整ったこの学院には、無数の監視カメラが設置されている。真帆は今まさに学院のシステムにハッキングしているのだ。強固なセキュリティを有するこの学院に対し、こんな芸当ができる人間もそうはいないだろう。
この”闘争”が決まったとき、真帆は防火扉を操作して相手を閉じ込め、手榴弾を大量に投じればいいという提案をしてきたが、さすがにそれは善司と一緒になって引き留めた。
別に相手を倒すことが目的ではないのだ。これは、戦いの理を問う闘争だった。
ディスプレイにはいくつものウィンドウで、監視カメラの映像が映し出されている。そのひとつに、二つの影があった。
よく見知った二人の姿に、和美は戦慄した。
「真帆! これどこの映像?」
訊いたが、こちらを見上げた真帆は首を傾げただけだった。ヘッドホンのせいで聞こえていないようだ。
かちんと来た。
思わず、真帆のヘッドホンに手を伸ばそうとすると、それより早く善司の手が真帆の肩に触れた。
真帆は躊躇なくヘッドホンを外す。
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