第一話 パレット

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第一話 パレット

自分を真っ直ぐ照らす日差しが、暑い。 窓から時々入ってくる風が、恋しくて堪らない。 だが、同時に俺の頬を撫でる潮風がYシャツの中にも入ってきて、正直気持ち悪い。 聞こえるのは、静かな波音と 煩い蝉の声。 見えるものは、真っ青でムラのある雲を背景に少しだけ揺れるベージュ色のカーテン。 俺はゆっくり 目を開けた。 夏が来た。 夏は、嫌いだ。 もうすぐ夏休みに突入する時期だが、特にという予定もないし、また「暑い」と繰り返し言いながらこの夏も終わるのだ。 周りは如何にも“青春”というものを謳歌しているようだが、俺にそんな事をする余裕はない。 友達は、いないわけではないのだ。遊ぼうと思えば遊べる。 ただ、遊びたくないだけだ。 俺が今欲しいものは、そのようなものではないのだ。 もっと、ありふれたもの。 その辺に転がっているような、当たり前のようで 当たり前でないもの。 周りが持っていて、自分にはないもの。 こんなこと、高校二年にもなって思うようなことではないのだろう。 だけど たまに すごく―――……。
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