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「…おい。起きろ、相川。」
そこでふと、我に返る。
ああ、ここは教室か。
この声は渡部だな。
「……なんだ。」
「ホームルームが終わったぞ。帰ろうぜ。」
「……ああ。」
この辺の地域は、都会と呼ぶには程遠い。
海があり、山や森も多い。
だから沢山の抜け道があり、学生たちのほとんどはよく利用している。
俺も以前はよく利用していた。
しかし、このところは全く使っていない。
自宅まで一番遠い、海沿いルートで通っている。
今日も、渡部と一緒にその道を歩く。
海は、あの独特の潮の薫りが嫌いだ。
夏は尚更潮風が肌にベタつくから、もっと嫌いだ。
しかし、景色は 好きだ。
この真っ青な昼空も、目が痛む程に眩しい太陽も、海に反射すると、パレットに注がれたいろんな色の絵の具がキレイに混ざっているようになる。
とても、とても美しい景色になる。
それなのに、やれ海が嫌いだの夏が嫌いだの言っていると、いつか罰があたるのではと思う。
しかし、苦手なものは苦手なのだ。
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