第一話 パレット

3/4
前へ
/38ページ
次へ
「早く、好きになれるといいな。」 え? その渡部の一言で、また我に返った。 すると、渡部は困ったような顔をしながら言った。 「その様子じゃあ、上手くいってないんだろう。新しい家族と、さ。」 それを聞くと、自分の心が見透かされてないと確信し、少し安心した。 それと同時に、 不安になる。 ――――心配させてしまった。 ――――そんなつもりはなかったのに。 「……そんなことは―――」 ない、と言う前に、渡部が遮った。 「早く、好きになれるといいな。」 「……だから」 「海。」 ……展開早すぎるだろう。 「……なんで。」 渡部は「にかっ」という効果音が似合う笑顔で答えた。 「なんとなく。」 「……。」
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加