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彼、渡部颯汰〈ワタベソウタ〉は、俺の友人の中では一番親しい仲だ。
中学からの付き合いだから、こんな口下手な自分とも一緒にいてくれる。
渡部は明るくて、面倒見がいい。
一見、誰もが楽天的な奴だと思うが、本当はとても深い思想を持っている奴だと俺は思う。
でも、それ故に時々何を考えているのか解らなくなる時がある。
掴み所がないのだ。
そんな彼のことはよく知っているつもりだが、俺の知らない内に彼に迷惑をかけてしまっているのであれば、それはとても申し訳無く思う。
こんな事、彼に言えば
「他人行儀だなぁ」と笑うかもしれない。
でも俺は、友人を私事で悩ませるのだけは、本当に避けたい。
大切な人達を巻き込むのは
絶対に
避けなければならないのだ。
「…お前って本当に時々、核心を突くよな。」
小さな声で、渡部が気付くか気付かないかくらいで言ってみた。
渡部の顔をちらりと見ると、彼は満面の笑みを貼り付けて歩いている。
―――こいつには敵わないな。
こうして俺はまた、小さな溜め息をつく。
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