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第二話 帰るべき場所
海沿いを通り過ぎ、渡部との分かれ道に来た。
渡部からさっきの笑みは消え、少し大人びた優しい笑顔が 目の前にあった。
「じゃあな、相川。」
「……ああ、じゃあな。」
そう告げて一歩踏み出した瞬間、また声をかけられた。
「……相川ー。」
なんだか気だるげな呼び方だと思い、俺はわざと渋々振り返った。
すると、意外なことにも渡部は少し戸惑った表情をしていた。
「…なんだよ。」
素直な疑問を投げ掛けただけなのに、渡部は口を半開き状態にし、数秒黙った。
「あ…」とかすれ声で言った気もしたが、その後すぐいつもの笑顔に戻った。
「また、明日。」
「…?ああ。」
何か煮え切らないなと感じつつ、二人はそれぞれの“帰るべき場所”へと向かって行った。
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