第二話 帰るべき場所

1/5
前へ
/38ページ
次へ

第二話 帰るべき場所

海沿いを通り過ぎ、渡部との分かれ道に来た。 渡部からさっきの笑みは消え、少し大人びた優しい笑顔が 目の前にあった。 「じゃあな、相川。」 「……ああ、じゃあな。」 そう告げて一歩踏み出した瞬間、また声をかけられた。 「……相川ー。」 なんだか気だるげな呼び方だと思い、俺はわざと渋々振り返った。 すると、意外なことにも渡部は少し戸惑った表情をしていた。 「…なんだよ。」 素直な疑問を投げ掛けただけなのに、渡部は口を半開き状態にし、数秒黙った。 「あ…」とかすれ声で言った気もしたが、その後すぐいつもの笑顔に戻った。 「また、明日。」 「…?ああ。」 何か煮え切らないなと感じつつ、二人はそれぞれの“帰るべき場所”へと向かって行った。
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加