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{マスターにさんざん賄賂だの不正介入だの言っていましたが、自身が不正介入していては他人にどうこう言う資格はありませんね}
未だにザワザワする会場の四隅の一角に到着した厳正に、〈ラグナロク〉はそう言った。
〈ラグナロク〉の呆れた口調での発言に、厳正は先程の騒動の際に自分の服についた埃を払いながら返す。
「まったくもってその通りだね。多分ああいう人達が、時子ばあちゃんが言うところの[あほんだら]の部類に入るんだろうね」
服の埃を払い終えた厳正はそう言うと、大きく背伸びをする。
そして厳正は会場の角に背中を固定させて目を閉じた。
そんな時、今回ただ1人大貴族の子供で試験に受かったエレナ・マリアージュが血相を変えて厳正の元へ走って来た。
「ちょっと君、強がりは止めなさい!」
「強がりって……僕、ですか??」
厳正は目を点にして自分を指を差す。
「当たり前でしょ!?グランツのお馬鹿が暴力を振るったのが君以外に居た?!居ないでしょ!!ほら、早くここに座って!私の《治癒魔法》で痛いの全部治してあげるから!!」
「え、えっと……」
厳正は消極的な容姿のエレナにそう言われて困惑し、回答に困った。
何故ならアッシュの初撃は、厳正自身が後ろへ跳ぶことで威力はほとんど殺され、ダメ-ジという点では壁への激突の方が痛かったというのが真実だからだ。
厳正がそのことをどう説明しようか悩んでいる間にも、エレナは厳正をその場に座らせ、自分が《治癒魔法》をかけ易い場所まで離れる。
「僕は―――」
「それじゃあ始めるよ!」
思いついた回答を厳正が口に出そうとした時、エレナは《治癒魔法》をかけ始めた。
話をするタイミングを完全に失った厳正は、彼女の行為を素直に受け取ることにした。
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