第一章 少年魔導師

14/20
前へ
/167ページ
次へ
ベルデを始めとする各部隊の隊長が会場に向かって歩き出した頃、彼らの目的地では信じられないことが起こっていた。 困惑と動揺が飛び交う中、司会役の男は仕事を果たす為に口を開く。 「で、では今回の魔導師軍入隊試験において、優秀な成績を修めた上位成績者4名へ、中央魔導師軍総大将ジオルグ・アールグレイ様より、表彰状が授与されます。」 男の言葉を聞いたジオルグは再び舞台袖から現れ、舞台の中央にその歩を進め、魔導師検定試験の時と同様、最優秀者である1位の賞状から読みはじめた。 「表彰状、第1598回魔導師軍入隊試験・[総合得点200点]・第1位・大神厳正。貴殿の優秀な成績を讃え、ここに表彰する。新歴91年5月14日。アイルンバート中央魔導師軍総大将、ジオルグ・アールグレイ。」 ジオルグは厳正に賞状を渡した。 その様子を会場中の人間は黙って見ていた。 目の前で起こる事態が常識を遥かに覆していることは、魔導師検定試験で2位に入ったエレナでさえ感じ取っている。 「一体何者なんだよあの少年は……」 「やっぱり裏口か?」 「いやでも、それならさっきの奴ら2人と一緒に連れていかれてるはずだろ?」 「た、確かに……」 皆厳正が叩き出した2大試験満点合格にざわつく。 だがそんな彼らより驚いているモノがいた。 それはこの異常事態を引き起こした張本人、厳正の相棒〈ラグナロク〉だ。 (たった1ヶ月……最初の2週間で傷を癒しながらイリーナ様と勉学に励み、退院後はジオルグ殿との修業に打ち込んだ……お2人の指導は辛く、常人ならすぐにでも逃げ出すようなモノだった……確かに血反吐が出るような努力はしている……でもたったそれだけで、大の大人でも受かる確率が低い2大試験を、両方とも満点で合格してしまうなんて……) 〈ラグナロク〉がそんなことを考えている間に表彰式は終了し、厳正は周りの視線を集めながら舞台から降りた。 「さて、それではいよいよ、合格者の所属する部隊の発表に移りたいと思います。」 男の言葉で会場の扉が開き、ベルデを筆頭に各部隊の隊長達が会場に入って来た。
/167ページ

最初のコメントを投稿しよう!

44人が本棚に入れています
本棚に追加