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フェイトがイリーナの車に乗り込んだ頃、厳正を始め、第一部隊に入隊することが決まった60名は、専用のバスに乗っていた。
バスの中では、厳正に対する噂が飛び交っていた。
9歳という異例の年齢での合格
両試験ともトップ通過
しかもその全てが満点
不正がバレて暴れていた、力自慢のアッシュをいとも簡単に鎮圧
加えて、自分達が入隊する部隊の隊長であるベルデと親しく話す姿
これだけの非現実的な出来事があって、噂が出来ない方が無理があった。
「本当に何者なんだよあの子。」
「やっぱり貴族の隠し子とか?」
「それはないだろー。」
「でも、もしクラッチフィールド家の隠し子だったとしたら、今回の試験にクラッチフィールド家の人間がいなかったのも納得じゃない?」
「確かに…それなら納得がいくよな。」
『うんうん。』
ある女性の案に、その他の合格者達は、首を縦に振った。
(マスター!いいのですか!?あんなことを言われて……!!)
彼らの会話を聞いて耐えかねた<ラグナロク>は、マスターである厳正に、《念話》でそう質問した。
(「言いたい奴には言わせておけ」)
(えっ?)
(僕が時子ばあちゃんから教わった、こういう状況への対処法だよ。僕はあの人たちの言ってることなんて、まったく気にしてないんだよ。だから、<ラグナロク>が怒ることはないんだよ。)
(そ、そうですか……)
<ラグナロク>がそう言うと、厳正は目を閉じて寝息を立て始めた。
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まったく同じころ、バスの少し手前を走る車には、ベルデが後部座席に座っていた。
「アホたれどもが…儂の家に隠し子なんぞおらんわ。」
ベルデは車の助手席にある受信機から発せられる、試験合格者達の声を聴いてそう言った。
「隊長…本当にこのような者達を、我々の部隊に入れるのですか?」
運転手を務めている、入って2年目の魔導師が、ベルデにそう質問した。
「そらそうじゃろ。一応儂が直々に指名してもうたんじゃからのぅ。」
その答えに、運転手の魔導師は、短く「そうですか」と返した。
(まぁこの様子じゃと、最初の1ヶ月で半分以下になるかもしれんのぅ……)
少々落胆する運転手を余所に、ベルデはそんなことを考えていた。
ベルデの妖しい笑みと、飛び交う噂を乗せて、一同を乗せた車とバスは、第一部隊の隊舎へと向かう。
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