第二章 理想と現実

2/14
44人が本棚に入れています
本棚に追加
/167ページ
第一部隊の隊舎。 その駐車場に、一台の車が入って来た。 駐車し終えた車から出てきたのは、ゆでだこのように顔を真っ赤にしたフェイトと、ニヤニヤするイリーナだった。 フェイトの赤面の理由は、病院の駐車場を出た後、イリーナが厳正とのその後を執拗に聞いてきたことで、自分が墓穴を掘ったことが原因だった。 ************************************** 時は15分程前に遡る。 「そう言えば、王子様…もとい、大神君とのその後はどうなのかしら?」 病院から出てすぐに、イリーナは運転しながらフェイトにそう質問した。 「その後って、何からのその後ですか。」 イリーナがわざと厳正のことを王子様と言い間違えたのを分かっているフェイトは、ぶっきらぼうにそう聞き返した。 「あら、そんなの:あなたが好きな子から一輪のバラを貰った:時からに決まってるじゃない。」 イリーナがそう言った直後、フェイトの顔は、再度真っ赤に染まった。 「―――っ!!ななな、なんで私が大神君からバラを貰ったことを知ってるんですか!!?」 フェイトがそう言うと、イリーナはすかさず前を向いたまま喋る。 「あら?私は大神君とは一言も言っていないんだけど。」 「!!!!!!!」 フェイトの顔は、さらに真っ赤に染まる。 「そう言えば、マリア隊長から聞いたんだけれど、まだ病室から出ちゃいけないのに大神君の病室に遊びに行って、マリア隊長に叱られたのって本当なの?」 フェイトはもう、俯いて何も喋らなかった。 そして、その後もイリーナの質問は続いた。 ************************************** そして今に至る。 「じゃあ、私はここで失礼するわね。」 二やつきながらそう言うイリーナに、フェイトは何も言わなかった。 「王子様によろしくねー。」 去り際にイリーナはそう言った。 「早く帰って下さい!!!!」 フェイトは大声でそう言った。 {マスター。そろそろ軍服の方に着替えなければ、入隊式に間に合いませんよ?} 「……うん。」 <ルーンフェアリー>の言葉に、フェイトはムッとした顔で返事をして、隊舎の方へ走って行った。 **************************************
/167ページ

最初のコメントを投稿しよう!