44人が本棚に入れています
本棚に追加
フェイトが隊舎の自室に着いた頃、ベルデか乗る車と、厳正達入隊者達を乗せたバスが、駐車場に到着した。
バスを降りた厳正達は、ベルデを先頭に、第一部隊の隊舎へ足を踏み入れた。
「うわぁ…」
「すげぇー…」
入隊者のほとんどが、そんなことを感嘆の声を発していた。
浮き足立つ入隊者達を余所に、厳正は表情1つ変えずに、自分達を見る第一部隊の隊員達を見ていた。
そんな中、ベルデは立ち止まり、厳正達の方へ振り向いた。
「さて、入隊者諸君。これから君らには、[魔導師証]と[魔導師軍手帳]の2つの証明証を発行してもらう。じゃが、60名全員を一か所に集めると時間的に効率が悪いんで、今から君らを、10人1組の5つの班に分ける。班分けは1回しか言わんので、よう聞いとくように。」
ベルデはそう言うと、合格者発表の際に使ったリストが入った封筒を、懐から取り出し、適当に名前を呼び始めた。
厳正は1班だった。
**************************************
厳正達が5つの班に分かれて行動している頃、フェイトは居住スペースを歩いていた。
{マスター。大神殿はすでにロビーにて班分けをしていますよ?急がなければ。}
<ルーンフェアリー>にそう言われたフェイトは、困った顔で答える。
「わ、分かってはいるんだけど……足が思うように進まなくて……」
{やはり病み上がりの身体に、長距離の運動はまだ無理なようですね。}
「う、うん。そうみたいだね。あはは……」
フェイトは、自分がイリーナに話した甘い考えを恥じらいながら苦笑した。
その後、2分もしない内に、フェイトは自分の部屋にたどり着いた。
フェイトは、服のポケットから魔導師軍手帳を取り出すと、自室の扉の横に備え付けられているタッチパネルに、開いた状態で押し当てた。
短い電子音の後、部屋の扉が開いた。
部屋の中は質素な作りで、オシャレなど、欠片も存在していなかった。
そして部屋にはベッドが2つ存在しているが、部屋の表札には、フェイトの名前しかなかった。
フェイトは、部屋に備え付けられた唯一のタンスを開け、中にかかっている軍服を取り出し、2つあるベッドの片方に置いた。
「うんしょ……」
フェイトは、軍服に着替える為、退院前にイリーナから貰った、女の子らしい服を脱ぎ始めた。
**************************************
最初のコメントを投稿しよう!