第二章 理想と現実

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慌てはじめる入隊者達だったが、ベルデはお構いなく続ける。 「無論、諸君らに戦闘経験っちゅうモンが無いことは分かっとる。じゃが、事態は一刻を争う。今こうしとる間にも、どっかで犠牲者が出とるかもしれん。儂らは第一部隊として、魔導師として、それを看過するわけにはいかん。」 ベルデがそう言うと、慌てていた入隊者達が、一気に静まった。 緊張した空気の中、ベルデは続ける。 「魔導師軍は今、万全な準備で奴らとの戦いに臨むため、各部隊で、隊員1人1人の戦闘データを取っとる。そして当然、入隊者である諸君も例外ではない。そこで、諸君の戦闘データの収集の為、諸君らには、今から本気で、入隊3ヶ月~2年の者達と、戦ってもらう。」 ベルデはそう言うと、指を鳴らした。 すると、第3トレーニングルームの扉が開き、60名の隊員が入って来た。 ************************************** 入隊者達がざわついているころ、第一部隊のロビーには、1人の女性が入って来ていた。 通り掛かった隊員は、女性を見つけると、すぐさま女性に敬礼した。 女性は、敬礼する隊員の向こう側に、おぼつかない歩き方をする少女を見つけた。 その少女を見つけた瞬間、女性は少女の元に走り出した。 ************************************** その頃、第3トレーニングルームでは、入隊者と入隊2年以内の者が、1対1で、DES(対象が負うはずの怪我を、痛みと感触のみに留める魔法を発動するための特殊な装置。)(ダメージエミュレートシステムの略))を使用し、2人の青年は、おのが武器である槍と斧で戦っていた。 その戦いは、片方が斬れば、もう片方も斬り返すという、まさに、一進一退という言葉が相応しい。 そんな戦いだった。 だが、その戦いを暇そうに眺めている者がいた。 (遅い……もっとこう…スピーディーに出来ないのかな…?) <ラグナロク>にそう問い掛けたのは、厳正だった。 (仕方ありませんよ。マスターが戦ったあの男、クロス・ディサイドは、戦いを熟知した、本物の戦士ですから。) 厳正の質問に、<ラグナロク>はそう答えた。 そうこうしているうちに、2人の戦いは、魔導師2年目の青年の勝利で終わりを迎えていた。 **************************************
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