第二章 理想と現実

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「うわぁ!!!!!」 扉が開くなり聞こえてきたのは、青年のそんな声だった。 「「!!!!!!」」 青年は、フェイトと女性がいる入り口付近に吹っ飛んできた。 そんな青年に、部屋中の視線が集まっていた。 そして、誰かが呟く。 「おい見たかよ……」 「あぁ、180を超える男が吹っ飛んだぜ…!!」 「しかもそれやったのは―――」 そんな誰かの呟きが合図だったかのように、部屋中の視線が、1人の少年に向けられた。 右手で刀を握り、隙のない、しかし独特な構えで、敵である青年を見るその少年を見て、フェイトが呟く。 「大神…君?」 「大神?あの子が?」 フェイトの呟きを聞いて、女性はそう言った。 と同時に、2人の近くまで吹き飛ばされた青年が、呻き声と共に起き上がった。 「ぐ……クソが!!ふざけんじゃねぇぇぇぇぇ!!」 青年はそう言って、厳正に向かって、槍を突き出しながら走り出した。 それを確認した厳正は、片手で握っていた刀を両手で握り直した。 そして下段の構えで腰を落とすと、自分から青年に向かって駆け出した。 互いが互いを目指して前進した為、2人の距離は、ものの3秒程で埋まった。 武器のリーチの長さから、必然的に青年が先手を取る。 「喰らえぇぇぇぇ!!!!」 青年は気合一閃、厳正の心臓目がけて、槍を突き出した。 当たる。 入隊者達も隊員達も、魔術師達でさえも、誰もがそう判断した。 否、そう判断せざるを得なかった。 確かに、:向かって来る:相手の攻撃を回避するのは簡単だ。 敵が繰り出す攻撃を、正確に捉え、当たらないように動けばいい。 しかし、今回の厳正と青年のようなケースの場合、お互いがお互いを目指して動いている。 その為、間合いが詰まる速度は倍になり、相乗効果で、お互いの突き系の攻撃の速度は、数倍にハネ上がる。 そんなとんでもない速度の攻撃を回避するとなると、その:数倍にハネ上がった突きの速度よりも速く:動かなければならない。 熟練の戦士でさえ難しい行為を、あんな幼い少年が出来る訳がない。 彼らはそう判断していた。 ただ1人、ベルデを除いて。 (避ける。大神君のあの目…駆け出す前の、あの目ぇには、なぜかそう思わせる何かがあった…!!) ベルデは、この瞬間の攻防を見逃すまいと、両目を見開いた。
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