第二章 理想と現実

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「それは…もっと速くて強い人と戦ったことがあったからですよ。」 「「????????」」 厳正の答えは、フェイトとローズの頭の中に、[?]マークを発生させ、疑問が晴れるどころか、余計に疑問を増やす結果となった。 3人のその様子を見て、ベルデが口を開いた。 「1ヶ月前に起きた、バハムート首都襲撃事件を知っとるやろう?」 「えぇ。バハムートの首都が、たった1人の魔導師によって、壊滅状態に陥ったっていう事件でしょう?」 「そうじゃ。」 ベルデは頷き、続ける。 「その事件の犯人が、鉾を武器にしとったんじゃ。」 「…え、えっと……」 「つまり、どういうこと…?」 フェイトとローズは、リレー方式でベルデにそう言った。 「だから、大神君がさっき言っとった、もっと速くて強い奴っちゅうんが、その犯人のことやっちゅうとるんじゃ。」 ベルデの言葉に、フェイトとローズの視線が、自然と厳正に向けられる。 当の厳正は、食堂自慢のデカ盛メニュー・[これでもか!!嫌気がさす程の白身魚尽くし定食](30分以内に食べ切れれば3万円)を、15分程で楽々とたいらげ、爪楊枝をくわえようとしているところだった。 「な、何で他世界で起きた事件に、君が関わっているの!?」 「お、大神君、どういうこと!?」 2人は大声でそう言って、厳正に詰め寄った。 その影響で、周りの人間の視線も、厳正に集中してしまっていた。 「え、えっと……」 (言っちゃっていいんでしょうか…?) 答えに困った厳正は、《念話》でベルデにそう問い掛けた。 (別にえぇやろ。) (ずいぶん軽く言いますね……) 厳正は呆れ顔になった。 (別に全国放送のテレビで公表する訳やないんや。第一、これから同じ部隊で働く連中に、君が<ラグナロク>の[所有者]であることを隠していけるとでも思っとるんか?) (無理ですね。) 厳正はサラっとそう言って立ち上がった。 たくさんの人と目が合った。 周りを見た厳正は、イスに座り直し、そして厳正は話し始めた。 自分が<ラグナロク>の[所有者]であることと、1ヶ月前に起きた事件で、自分が何をしたかを。 驚く者は大勢いたが、厳正が話している間は、誰も横槍は入れず、真剣に話を聴いていた。
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