第三章 嵐の前の静けさ

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6月8日・アトラス ジリリリリリリ!!! ベッドの横にある目覚まし時計が、けたたましく鳴り響いた。 「う~ん…」 フェイトは呻きながら、ベッドから手を伸ばし、目覚ましを止めた。 そしてベッド中でモゾモゾと動き、30秒程度経つと、フェイトはベッドから上半身を起こした。 フェイトは寝ぼけ眼のまま、辺りを見回した。 フェイトの視界に入って来たのは、木造の床や壁と、空になっている隣のベッドだった。 「はれ?確か昨日、夜遅くに一緒に戻ってきたはずじゃ……」 フェイトがそう言うと、机の上に置いてあった、<ルーンフェアリー>が、フェイトに話し掛ける。 {大神殿でしたら、1時間程前に起床されて、町内を走ってくると申されていましたよ。} 「そ、そうなんだ…」 <ルーンフェアリー>の言葉に、フェイトは口ではそう言っていたが、心の中では――― (よ、夜遅くに帰ってきて、7時間くらい寝て、朝早くに起きてランニング…って……どれだけ元気なの?) そう思っていた。 ************************************** まったく同じ頃 厳正は、裏山で1人、修業に励んでいた。 「ふっ!!はっ!!はぁっ!!」 息を吐く度に繰り出される斬撃は無駄が少なく、速度もかなりものだった。 そんな最中、<ラグナロク>が厳正に話し掛ける。 {マスター、[夢の扉]の起床時間まで、残り10分を切りました。} 「ん…了解。」 <ラグナロク>にそう言った厳正は、斬撃を繰り出すことを止め、刀の形に変形させていた<ラグナロク>を、指輪の形に戻した。 そして厳正は、[夢の扉]に向かって走り出した。 ************************************** 厳正が[夢の扉]の正面玄関の戸を開けると、靴紐を結んでいるジャージ姿のフェイトと、[夢の扉]の設立者である時子が、そこにはいた。 「…えっと……何してるの?」 厳正は2人にそう言った。 「えっと……大神君のところに行こうかなって思って……」 「なっ?せやから言うたやろ?厳正ならそろそろ帰ってくるって。」 厳正の言葉に、フェイトと時子はそれぞれそう言った。 **************************************
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