第三章 嵐の前の静けさ

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[夢の扉]の食堂には、子供達が集まり、それぞれ席に座っていた。 全員が集まったことを確認した時子は、席から立つと、騒いでいた子供達を静かにさせた。 「ほんなら、手を合わせて……いただきます。」 『いただきま~す!!』 時子がそう言うと、小さな子供達が、時子の言葉を復唱した。 ************************************** 「それで、何で玄関にいたの?」 「いただきます」の大合唱から10分が経過し、朝食を食べ終えた厳正は、フェイトにそう質問した。 「えっと…朝起きたら、大神君がいなかったから、探しに行こうかなって。」 フェイトがそう言うと、厳正は、会話方法を口伝から《念話》に変えて、再度質問する。 (……で、本当は?) (近接戦闘の練習してるなら、見学してお手本にしたいなー…って。) フェイトは、朝食を食べ終え、お茶を飲みながらそう答えた。 (どうして?君は確か…遠距離砲撃型の魔導師でしょ?近距離戦闘の練習なんて、見ても意味無いんじゃないの?) 厳正はごちそうさまを宣言して、お椀が載ったトレイを運びながらそう質問した。 フェイトは、それを追うようにしてごちそうさまを宣言し、席から立ち、トレイを運びながら答える。 (そんなことないよ。だって、もしもあの時、私があの女の人に勝てていたら、大神君が危険な目に会うことはなかったでしょう?) トレイを返却口に返そうとしていた厳正の手が、一瞬止まった。 (…そんなこと、考えてたんだ……) (うん…私、小さい頃から《砲撃魔法》ばかり練習してて、近接戦闘の練習なんて、まったくしてなかったから……) フェイトはそう言いながら、トレイを返却して、部屋に戻ろうとしている厳正に追いついた。 (お願い!私、近接戦闘も出来るようになりたいの!だから私に、近接戦闘の修業をつけて!) フェイトにそう言われた厳正は、周りに誰もいないことを確認すると、《念話》ではなく、口伝でフェイトに話し掛ける。 「いいよ。」 「本当?!」 にじり寄って来るフェイトの顔の前に、厳正は左手を突き出すと、人差し指をピンと立てた。 「ただし、1つだけ条件がある。」 「条件…?」 フェイトが首を傾げる。 「僕は君に近距離戦闘の稽古をつける。だからその代わりに、君は僕に《砲撃魔法》の稽古をつけてほしいんだ。」
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