第一章 少年魔導師

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5月14日 アイルンバートの首都・ミストナーデに存在する国立魔導養成学校。 そこでは今、2つの国家試験が行われていた。 魔導師検定試験・魔導師軍入隊試験の2つがそれである。 この2つの試験は、実技試験100点・筆記試験100点の200点満点で採点され、魔法が使えれば誰でも受験することができ、年齢制限はない。 ちなみに6歳から魔道幼年学校に通い、魔導養成学校を経て15歳で卒業することから、世間一般では15歳からが魔導師検定試験及び、魔導師軍入隊試験を受験する年齢ということになっている。 だが今回の試験では、どう見ても15歳以下……いや、12歳にも満たない少年が両方の試験を受けていた。 しかもその少年は、同じ教室で試験を受けている誰よりもスラスラと解答を書いていく。 結果、少年と同じ部屋で試験を受けていた者達は試験に集中しきれず時間を浪費、そして試験終了を告げるチャイムが無情にも鳴り響いた。 【試験終了です。筆記具を置き、答案用紙を裏返して速やかにご退室ください。】 スピーカーから聞こえてきた指示に、少年に気をとられていた者達の表情は絶望に染まった。 ************************************** 2つの試験を受け終わった者達は、国立魔導養成学校の中で最も大きな体育館で合格発表を待っていた。 しかし集まっている者達の表情は、試験結果を待つ者のソレとは明らかに異なっていた。 その理由は、彼らの視線を集めている例の少年の存在である。 と言っても、少年に自覚は無い。 本人はただ、試験を受けて、その結果発表がここで行われるからここにいるのだ。 その証拠に、少年は自分に向けられている全ての視線を完全に無視し、自分の[武器](デバイス)―――魔導師が魔法を使用する際に必要不可欠な魔力最適化装置。喋らないモノと喋るモノが存在する。―――と、思念通話の1種である《念話》で雑談していた。 (マスター。筆記試験の方はいかがでしたか?私は試験開始前に回収されたので、ぜひとも手ごたえの程を聞きたいのですが……) (うーんそうだなぁ……思ったより簡単だったかな。試験時間の半分くらいはペン回しで遊んでたし。) (さ、左様で……) 少年の返答に[武器]は動揺する。 そんな時、体育館の舞台袖からスーツ姿の男が現れ、舞台の中央まで移動すると、手に持っていたマイクを使って受験者達に話しかけた。
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