第一章 少年魔導師

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少年の言葉は会場中の人間を全員沈黙させた。 そんな異様な空気の中、進行の男は職務をまっとうするために口を開く。 「え、えー……以上の4名が今回の魔導師検定試験の上位成績者です。突然取り乱してしまいまことに申し訳ありませんでした。では上位成績者の4名には、中央魔導師軍現総大将であらせられるジオルグ・アールグレイ様より表彰状が贈られます。」 進行役の男がそう言うのと同時に、男から見て反対側の舞台袖からジオルグ・アールグレイがその姿を現す。 その瞬間、会場に集まっている者達のどこか浮ついた雰囲気が霧散した。 そんな空気の中でジオルグは叫ぶ。 「表彰状、今回の魔導師検定試験で、貴殿の成績は他を寄せつけぬものであった。その栄誉を讃え、ここに表彰する。新歴91年5月14日。アイルンバート中央魔導師軍総大将、ジオルグ・アールグレイ。」 ジオルグはそう言い、厳正に表彰状を差し出す。 その様子を舞台の上にいた他の3人の内、男2人は目を細め、そして残りの娘は未だに驚きながら見ていた。 それを見て見ぬフリをして、ジオルグは次の賞状を読み上げる。 そして全員が表彰状を受け取り、上位成績者4名は各々授与された表彰状を脇に抱えて会場に散らばった。 「ジオルグ・アールグレイ総大将、ありがとうございました。……さて、それでは4位以下の合格者発表を行いたいと思います。」 進行役の男がそう言うと、舞台の前に巨大な魔力モニターが現れ、映画のエンドロールのようにいくつもの数字を表示し始めた。 「この魔力モニターにご自分の受験番号が表示された方はこの場にお残り下さい。あなた方が今回の栄えある合格者になります。……番号が表示されなかった方は、この場から速やかにご退場願います。残念ながらあなた方は今回不合格と見なされました。ご自分の技術と知識に磨きをかけ、9月に再び行われる試験に挑んで下さい。」 男の言葉を聞き、暗い顔になっていた者達はゆっくりと会場を後にする。 そんな者達の姿を視線の隅に捉えつつ、男は続けて言う。 「30分後、魔導師軍入隊試験の上位成績者4名と、4位以下の合格者の発表を行います。」 男がそう言うと、ジオルグはすぐに舞台袖に消え、男もそれに続いた。 **************************************
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